研究内容

ゲノム創薬とは

2003年、約32億塩基対からなるヒトゲノムの塩基配列を決定されてから10年以上経ちました。しかしながら、塩基配列が明らかにされても、これらがどのような遺伝子を意味しているか、それぞれの遺伝子が細胞の中でどのような働きをしているかということなど、まだまだわからないことがたくさんあります。

ゲノム創薬とはゲノム情報を利用して、新しい薬やより効果の高く副作用の少ない薬を開発する分野です。私達は、細胞膜に存在し生体反応で重要な役割を果たしているG蛋白供役型受容体(GPCR)や、網羅的な遺伝子解析手法として脚光を浴びているマイクロアレイ技術、そしてゲノム情報をはじめとした多くの情報を解析するために必要なバイオインフォマティクスを中心に研究を行っています。

マイクロアレイ

ゲノム創薬において最も重要なことの一つは、創薬ターゲットとする分子の決定です。
マイクロアレイ(DNAチップ)は病態に対し特異的な遺伝子発現パターン(プロファイル)を同定し、医薬品開発のターゲットを迅速に発見することを可能にします。このマイクロアレイを用いることで、各種疾患動物モデルや細胞生物学現象における体系的かつ網羅的な遺伝子発現解析を行うことができます。解析結果をデータベース化し、生物学的検証を加え疾患・治療関連遺伝子群を絞り込むことで、関連遺伝子を標的とする細胞生物学的機能解析、及び低分子化合物の選択ができるようになります。

脂肪酸受容体

ゲノム創薬において最も実績があり多くの研究者・企業が取り組んでいる標的分子ファミリーが、G蛋白質共役型受容体(GPCR)を代表とする薬物受容体です。GPCRは、G蛋白質と共役して細胞内に情報を伝達する役割を持つセンサー分子です。またGPCRは疾患と関連している場合が多く、医薬品の開発のための主要な標的の一つです。しかしこれらの多くは共役時に作用する物質(リガンド)が未知であり(オーファン受容体と呼ばれています)、GPCRが関与する生理現象も未解明のものが残されています。

私達はオーファン受容体のリガンド探索を行い、新規脂肪酸受容体GPR120(FFAR4)を同定しました。さらにこのGPR120が食事性の脂肪酸刺激によりGLP-1等のペプチドホルモンの分泌を促進し、マウスとヒトの両方で肥満と関係することを示しました。この結果は、GPR120がメタボリックシンドロームに対する治療標的である可能性を示します。
当研究室では、このGPR120に代表される脂肪酸受容体について、疾患に関わる標的分子の迅速な同定を行い、その生理的役割を解明することを目標に研究を行っています。